2010 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子ネットワーク制御による成体脳海馬神経幹細胞の未分化維持機構の解明
Project/Area Number |
21800037
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
下崎 康治 長崎大学, 先導生命科学研究支援センター, 助教 (40379540)
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Keywords | 神経科学 / 神経幹細胞 / ニューロン新生 / 未分化維持機構 / 転写因子 |
Research Abstract |
成体脳海馬領域における神経幹細胞の未分化維持と分化制御機構解明のために、成体脳海馬神経幹細胞のサブタイプ特異的に感染する遺伝子組換え発現レトロウィルスとレンチウィルスを用いてSox2とTLXによる転写因子ネットワーク発現制御機構の解明をin vivoで明らかにすることを目的とした。実施した研究概要は本研究申請計画に準じた。昨年度構築したshRNAベクターが細胞内で機能しないことが判明したので、新たにSox2とTLXのshRNAを組込んだレンチウィルスベクターを米国GeneCopoeia社より購入した。このshRNA発現レンチウィルスベクターと細胞腫特異的に感染するNIT-GFPとCAG-GFPレトロウィルスベクターとの共感染によって目的の達成を試みた。まず購入したレンチウィルスベクターを培養神経幹細胞に感染導入し、puromycinによる薬剤選択の後、定量PCR法によって内在性遺伝子のノックダウンを査定した。その結果、コントロール遺伝子のノックダウンは効果的に検出されたが、Sox2及びTLX遺伝子に関してはその効果が検出されなかった。同社に問い合わせを行い、新たに数種類のベクターを試したがいずれも効果は見られなかった。外注製品に信頼性を見い出せなかったため、Type-IIに感染導入されることが確認ずみのレトロウィルスベクターを新たに入手し、Sox2及びTLX遺伝子に対するshRNA-GFPベクターの構築を行った。培養神経幹細胞に感染導入後、FACSソーティングによりGFP陽性細胞のみを回収し、定量PCRにて判定を行った。その結果遂に.機能的にノックダウンできることが判明したため、研究実施計画通り哺乳類高感染用パッケージングコンストラクトを用いてin vivo用高感染効率遺伝子発現ウィルスを作成した。この濃縮ウィルス溶液を成体マウス脳海馬領域に注入接種し、感染導入実験を行った。遺伝子発現ウィルス接種後タイムコースをとって脳固定をし、GFAP, Nestin, DCX等のマーカー遺伝子に対する抗体で免疫染色を行った結果、Sox2, TLX遺伝子は共に神経分化に必須な遺伝子ということが示された。Sox2とTLXがTypeI-からType-II神経幹細胞のドライバー遺伝子となっているという予想であったが、in vivo成体脳内では神経分化のサバイバルに必須な因子ということが示唆された。これらの結果から、Sox2とTLXの新たな役割と位置づけが想定された。同時にType-IからType-II神経幹細胞の制御は当初予想のような単純な機構では説明がつかず、新たな遺伝子探索が必要であることが意義づけられた。
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