2010 Fiscal Year Annual Research Report
大脳と小脳を中継する橋核における神経信号処理のメカニズム
Project/Area Number |
21800056
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
石川 太郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (50547916)
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Keywords | 神経科学 / 生理学 / 薬理学 / 脳・神経 |
Research Abstract |
脳幹にある橋核は大脳皮質からの信号を受け取り、この信号を苔状線維を介して小脳へ中継している。苔状線維は小脳皮質への主要な入力線維であり、橋核以外にも三叉神経核や前庭神経核などいくつかの部位から由来することが知られているが、高等動物においては橋核が主な起始核である。研究代表者らによる過去の研究により、齧歯動物の顔面(ヒゲを含む)に体性感覚刺激を与えた際に、苔状線維が非常に高頻度の活動電位発火(700Hz以上)を示すことが知られていた。このような高頻度発火を発生する仕組みが橋核にあることを想定し、その機序を探ることが本研究の主な課題であった。 平成22年度には、前年度から継続して、in vitro実験系(スライス標本)において顕微鏡観察下に同定された橋核ニューロンの特性を調べる実験を行った。その結果、橋核ニューロンは脱分極刺激に対して、上述のような高頻度発火を示さず、最大瞬間発火頻度は平均で約220Hz、最大例でも350Hzに至らなかった。このことは、当初の想定に反し、700Hzを超えるような高頻度発火は橋核由来ではないことを示唆した。 そこで、苔状線維を小脳に投射している他の部位として、三叉神経核を調べた。三叉神経核の投射細胞からホールセル記録を行い発火パターンを調べたところ、脱分極刺激に対して60%の細胞において400Hz以上、20%の細胞において700Hz以上の最大瞬間発火頻度を示し、上記の苔状線維と同様の高頻度発火を示すことが明らかになった。このことにより、非常に高頻度の活動電位発火は橋核ではなく三叉神経核に由来することが示唆された。今後は、この結果をin vivo標本において確認する。
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