2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21810003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
BUKH Alexander University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (70522001)
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Keywords | 国際関係 / ソ連 / ナショナル アイデンティティ / 日ソ関係 |
Research Abstract |
当該研究はより広範な研究企画の一部であり、その全体的な目的は19世紀末から今日にかけて、国民アイデンティティという視座から日ロ関係を分析することである。この研究企画の前段階において、著者は日本の国民アイデンティティとロシア観及びロシアの革命以前の日本観を分析してきた。当該研究は昨年度の9月に始まった。最初の段階において、著者は、ロシア革命のロシア国民アイデンティティとナショナリズムに対する影響の先行研究の整理を行った。これらの成果を踏まえ、革命後(主に1920年代)のロシアのアイデンティティと新生ソ連における日本観の変容を分析した。通常、国民アイデンティティの分析において、公式の文書が分析対象になっているが、革命後のロシアにおいて公式文書のイデオロギー色が極めて強いため、日本を訪れたソ連の作家の旅行記を分析した。これらを通じて、ボルシェビキ思想のロシアにおける自己民族認識に対する影響を東洋観及び日本観という文脈において分析し、明らかにした。具体的に、共産主義思想、とりわけ階級闘争論と世界革命論、と同時に存在してつづけた"ロシアは西洋と東洋のかけ橋である"という認識はどのように融合し、どのように齟齬したのかということを分析した。 国内外の先行研究においては、ロシアのナショナリズムは革命後階級闘争という思想に基づき、弾圧を受けて、1930年代にスターリンの政策の一環として復活し、その形態は帝政時代のロシアとほぼ同様であるというような認識定着している。このように、1920年代のロシアの国民アイデンティティまたはナショナリズムは殆ど注目されていない。当該研究は1920年代に視座を当てることによって、ボルシェビキ思想と帝政時代から存在していた日本観や東洋観はどのよう作用し、ロシアの国民アイデンティティにおける断絶性と連続性を明らかにした。現在、この研究をまとめた学術論文はSlavic Reviewという学術誌の査読を受けている。
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Research Products
(3 results)