2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21810010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宮野 勝 Kanazawa University, フロンティアサイエンス機構, 博士研究員 (50547198)
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Keywords | 遺伝子 / ゲノム刷り込み / 発現制御 / クロマチン構造 |
Research Abstract |
ヒトのゲノム刷り込み遺伝子であるH19をゲノム刷り込みが無いとされている鳥類細胞に移入した結果、H19の発現調節領域において、DNAは高メチル化状態を維持しているにも関わらず、発現抑制解除が認められた。このことから、ヒト染色体を鳥類細胞に移入したことで、遺伝子近傍においてDNAメチル化以外のエピジェネティックな変化が生じた結果、発現異常をきたした、もしくは、鳥類細胞にはヒト染色体上に存在するゲノム刷り込み発現に必要な刷り込みを認識する因子が存在しない可能性が示唆された。これまでにプロモータ領域におけるヒストンタンパク質のメチル化修飾がゲノム刷り込み発現において重要であることが報告されており、我々はH19のプロモータおよびその上流の刷り込み調節領域におけるヒストンの修飾状態をDNA免疫沈降法を用いて解析した。しかしながら、結果は予想に反して哺乳類細胞同様に発現抑制型の修飾状態を維持していた。次に、我々は局所的な修飾の変化ではなく、IGF2/H19領域における全体的なDNAの高次クロマチン構造の変化が刷り込み発現異常を引き起こしたのではないかと考えた。そこで遠位に存在するDNA間の相互作用を解析する3C(Chromosome Conformation Capture)法を用いて、IGF2/H19領域における高次クロマチン構造の解析を行った。その結果、鳥類細胞では哺乳類細胞でみられた高次クロマチン構造が形成されていないことが明らかになった。以上から、H19の刷り込み発現確立には、鳥類細胞には存在しない進化の過程で獲得したタンパク質による高次クロマチン構造の形成が必須であることが示唆された。我々の知見は進化の過程で得た因子による高次クロマチン構造の形成がゲノム刷り込み獲得の引き金である可能性を示唆しており、ゲノム刷り込みの生物学的意義を考察する上で非常に興味深いと考えられる。
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