2010 Fiscal Year Annual Research Report
スピンナノレーザに向けたスピン偏極電子集団の光学応答に関する研究
Project/Area Number |
21810017
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
池田 和浩 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (70541738)
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Keywords | マイクロ・ナノデバイス / 応用光学・量子光工学 / 光物性 / スピンエレクトロニクス |
Research Abstract |
平成21年度に、GaAs(110)上量子井戸における長い電子スピン緩和時間は、ナノ加工を施しても変化しないことを実験的に実証した。これによりスピンレーザをナノスケールに加工してもその特徴である円偏光発振を得られる可能性がある。この成果を受けて、平成22年度は、スピンレーザのナノスケール化のために表面プラズモンポラリトン(Surface Plasmon Polariton : SPP)モードを微小レーザ共振器に用いるための具体的な設計を、解析および数値計算により行った。 これまで報告されている金属-半導体ナノレーザでは、最もモード断面積が小さくなる最低次のSPPモードによるレーザ発振は、金属中の自由電子による減衰損失のために低温でのみ実現されている。本研究では、極薄い金属膜において、表裏の2つのSPPモードが結合することによって生じる、伝搬損失が小さい「長距離伝搬SPP」を用いてナノメートルスケールで且つ低損失となるレーザ構造を検討した。通常用いられる円筒状の金属被覆半導体構造において、長距離伝搬SPPをレーザ共振器に用いる上での欠点は、モード分布が金属被覆の外側に集中するため、利得媒質との重なり、すなわち閉じ込め係数が小さく、モード利得が十分に得られないことである。今回特に、金属被覆の外側のクラッド領域の屈折率を3.5程度に大きくすることにより、閉じ込め係数が改善されることを示した。また、この大きな屈折率は、金属被覆の外側を、利得を有する半導体とすることが出来ることを意味する。外側を利得領域としたほうがより効率的にモードを増幅できると考えられ、計算によりこれを確認した。このような構造は、例えばプラズマエッチングなどにより半導体に穴を掘り、金属を蒸着することにより可能であると考えられる。 上記の知見は、スピンナノレーザの設計において重要な指針を与えるものである。
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