Research Abstract |
本研究課題では,電子顕微鏡法を用いメソ構造物質の構造評価とその評価方法の開発を行う.平成22年度は,(1)電子線トモグラフィーを用いシリカメソ多孔体の三次元構造評価を行うにあたり観察条件の最適化を行った.装置の機械的な制限による情報の欠如を可能な限り低減するため,高傾斜角のデータ取得が可能なグリッドを用い±70度以上の傾斜が可能な条件を見つけた.また,多孔質材料特有の電子線照射によるダメージの影響を評価を行った.今後,この結果をふまえ電子線トモグラフィーによる新規構造を持つシリカメソ多孔体の三次元構造の再構築を進める.(2)アニオン性界面活性剤を用いて作製したケージ型シリカメソ多孔体に着目し,そこで観察された新奇な四面体最密充填(TCP : Tetrahedrally Close-Packed)構造について透過電子顕微鏡法を用い評価を行った.TCP構造は4つの多面体(5^<12>,5^<12>6^2,5^<12>6^3,5^<12>6^4)の配列として記述することができ,Fd-3m構造は2つの多面体(5^<12>,5^<12>6^4)がダイヤモンド構造に配列した構造を持ち,二種類の多面体レイヤー(Layer AとLayer α)の積層(AαBβCγ)として記述することができる.ここで(A, B, C)はLayer Aを,(α, β, γ)はLayer αを表す.今回,観察された新規構造は,5^<12>6^2,5^<12>6^3多面体からなる新しいレイヤー(Layer z)を含んだz構造(空間群:P6/mmm,CzCzC積層)とμ構造(空間群:R-3m, CzCγAzAαBzB積層)である.興味深いことに,これら2つの新規構造を含めシリカメソ多孔体で見られるTCP構造は,スケールは異なるものの合金等でみられるFrank-Kasper相が持つ構造と非常に良い類似性を持つ.
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