2010 Fiscal Year Annual Research Report
ジェンダー格差と経済発展:台湾、タイ、インドの多国間比較分析
Project/Area Number |
21810031
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
栗田 匡相 関西学院大学, 経済学部, 助教 (60507896)
|
Keywords | ジェンダー格差 / 経済発展 / ミクロ計量分析 / タイ / インド / 中国 / 台湾 |
Research Abstract |
本研究課題では、分析対象国として台湾、タイ、インドの3カ国を考え、ジェンダー格差(賃金、教育)と経済成長(経済発展段階)の関係を、古くは1970年代初頭から現在(2006年前後)までの個人レベルのミクロデータを用いて分析を進めていく。同一のフレームワークで各国の分析を行うため、それらの研究成果を比較検討する多国間比較分析が可能となる。こうした作業によって、これまでほとんど分析されてこなかった途上国経済の発展段階とジェンダー格差の関係性に関する分析視点、枠組みを提示し、当該分野の研究進展に貢献することになる。 平成22年度については、当初の予定では台湾の分析を行う予定であったが、他の研究プロジェクトとの関連性を鑑み、研究開始当初は想定していなかった中国やカンボジアの分析を主に進めることになった。これにより、本研究の意義の一つである多国間比較の幅が増えることになり、研究の発展がより一層進んだといえよう。また、単なる所得や賃金の格差を推定するだけではなく、産業別の賃金プレミアムを男女ごとに推計し、それを比較するといった手法によって、これまで議論が進んでいなかった輸出主導型の経済発展戦略とジェンダー賃金格差の関係性を議論した。例えば、先行研究ではタイのような準工業化輸出指向経済では、電子機器等の組み立て工などとして働くことの多い女性の賃金が低く据え置かれることで、国の経済成長が促進される可能性を指摘している。こうした論点を各産業ごとに推定し検証したが、ある特定の輸出主導型の産業だけにジェンダー賃金格差が特徴的に生じているわけではないことが判明した。いずれにせよ、ジェンダー格差と経済発展段階の関係をより構造的に議論していくためには、より一層の研究蓄積が望まれており、今後も本研究課題を発展的に継続していく予定である。
|