2010 Fiscal Year Annual Research Report
構造的曖昧性とその理解~日英語の否定と焦点の相互作用に関する心理言語学研究
Project/Area Number |
21820003
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小泉 有紀子 山形大学, 基盤教育院, 講師 (40551536)
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Keywords | 言語学 / 心理言語学 / 国際情報交換 / アメリカ合衆国 / フランス |
Research Abstract |
人がことば、特に構造的に曖昧(ambiguous)な文をどのような方略を用いて理解しようとするかについて、特に日英語の否定と焦点(focus)の作用域に関する曖昧性(例:Jane didn't buy the blouse because it was silk)をとりあげてその処理プロセスにおける語用論(文脈)・韻律特性が果たす役割について理論言語学・心理言語学的アプローチを用いて行った22年度の研究成果を報告する。 まず、昨年度末から実施の音響分析と黙読実験データ分析を継続して行い、成果を国内外の学会・学術誌に発表した(論文と学会発表)。音響分析では、当該構文の明示的韻律特性のより詳細な分析に基づき、If節埋め込み条件でnot-because構文の韻律特性に変化がみられるという母語話者の直感的観察を裏付けた。昨年度末より継続中の黙読実験データの収集が完了した。 また、国際学会での発表と情報交換を通じて、次年度への足がかりとなる国際研究協力体制(仏語や西語における当該構文の処理について)を立案することができた。次年度も継続して発展させていきたい。 また、not-because構文と他の関連構文の情報構造や韻律についての文献研究と22年度に予定する実証的研究もすすめることができた。例えばnot-when文(e.g.John didn't smoke when he was in college)においては、否定とwhen節の作用域の相互作用により2つの可能な解釈があるにもかかわらず、not-because構文で見られるような2つの解釈における韻律特性上の違いが存在しないという母語話者の直感がある。否定と焦点構文一般に言える特性とは何でありnot-because文は何が特別なのか考察を進めている。 以上、22年度の本研究における活動は当初の計画の骨子を達成し、国内外での発表を通じてこの研究の更なる発展の方向性について知見や情報、研究協力体制を確立するうえで大変有意義なものであったと言える。
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