2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21820007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 彰 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 助教 (80535097)
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Keywords | 倫理学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、自由および平等という社会の基本的価値を統合的に考察することで、その二つの価値を布置する正義の輪郭を描出し、社会保障制度や税制に関わる分配的正義をめぐる実践的問題に応答しうる枠組みを提出することである。その目的を果たすために平成21年度は、自由と平等の価値をめぐる最新の研究動向についてサーヴェイし、自由と平等の価値についての独自の見解を提出すべく、定義上の混乱を回避しうるような一貫性のある(かつ有意味な)自由概念および平等概念の解明を試みた。まず自由の価値についてだが、純粋な消極的自由論(H.SteinerおよびI.Carterの学説)について整理し、その理論的意義と今後克服すべき問題点について、共和主義的自由論者であるP.Pettitの消極的自由論批判をふまえて確認した。平等の価値については、平等主義的正義論の嚆矢的存在とされるJ.RawlsやR.Dworkinの理論の特異性を確認し、彼ら以降の平等論が平等の価値をめぐる議論に彼ら以上に向き合っている点について確認した。このように、平成21年度の研究成果は主としてサーヴェイ中心だが、自由と平等の価値に関する見解を統合的に再構成し、それが正義構想においてどのような役割を担うかについて、オリジナルな議論を提出したうえで、その実践性や実行可能性について考察する平成22年度の研究につながりうる内実を有するものである。
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