2009 Fiscal Year Annual Research Report
農村開発に果たすオルタナティヴな食料生産・消費の実践に関する地理学的研究
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21820015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
伊賀 聖屋 Kanazawa University, 人間科学系, 准教授 (70547075)
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Keywords | ローカルフードシステム / 農村開発 / フードネットワーク論 / 米加工業 |
Research Abstract |
本年度は、大手食品企業のオルタナティヴな食料供給体系の実態と、そこでのオルタナティヴ性の内実に関するフィールド調査を行った。具体的には、1)プレミアムフードを市場投入している大手食品企業がどのような原料調達システムを構築しているのか、2)それが原料生産者と取り結ぶ関係にどのような特徴(たとえば、「介在主体の行為の社会的・領域的埋め込みの度合い」や「取引における公正性」、「原料農産物の質の評価基準」)がみられるのか、についての聞き取り調査を行った。具体的な事例として取り上げたのは、地元農家との酒米契約栽培に取り組む清酒製造業A社(新潟県長岡市)の原料調達体系である。 調査の結果明らかとなったのは、以下の諸点である。(1)A社の原料調達システムは長岡市内でほぼ完結しており、比較的狭小な空間スケールにおいて酒米生産・調達が行われている。(2)A社は、「原料生産者との権力関係の発生」や「原料調達の非効率化」を回避するために酒米農家の組織化を進めている。その結果、生産者もA社に対してある程度の発言権を有するようになっており、農家とA社従業員間の個人的紐帯の強さも認められる。(3)一方で、A社と酒米生産者の関係には、「栽培勉強会への参加」や「科学的手法に基づく酒米の品質管理」をめぐる厳格なルールが存在している。 来年度は、地場食品企業のローカルフードシステム(LFS)との比較検討を通じて、大手食品企業と地場企業の良質食品供給体系の構造的特質の異同に言及し、LFSにみられるオルタナティヴ性がもつ意味を明らかにする。具体的には、大手企業の良質食品の供給体系が、製品の質においてのみオルタナティヴ性が強いもの(=Alternative food network)なのか、もしくは主体間の関係性についてもオルタナティヴ性が強いもの(=Alternative food network)なのかを重点的に考察する。
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