2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本語の疑問文とそれに関連する構文の歴史的・対照言語学的研究
Project/Area Number |
21820023
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
衣畑 智秀 大阪大学, 文学研究科, 助教 (80551928)
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Keywords | 疑問文 / 選言 / 不定 / 日本語史 / 琉球語 / 例示 / 間接疑問 |
Research Abstract |
本研究では、日本語の疑問文とそれに関連する構文について、主に中世以降に焦点を当ててその歴史を記述するとともに、日本語の歴史と琉球語を対照することで、諸構文の関連性、及びそれぞれの歴史変化について、一般言語学に貢献しうるプロセスの解明を目指している。本年度は、この研究目標もと、疑問に関連する構文の発達について、昨年行った調査を元に学術論文を執筆し、学会誌に掲載した。これまで、古代語において、カが係り結びなどの疑問文で用いられていたことは分かっていたが、その後、「AかBか」のような選言、「何か」のような不定の用法が、いつごろから見られるようになっていったのかは明らかでなかった。この論文では、実証的なデータを示し、カが、中古まではほぼ疑問の助詞として用いられ、15世紀以降に選言の用法を、近世後期に不定の用法を、それぞれ名詞句の位置で発達させたことを明らかにした。このことにより、カが格助詞に前接し名詞としての資格を持つ構文は、間接疑問文を含め全て、中世以降に発達していることが明らかになり、格助詞に後接する中世以降衰退した係り結びと、相補分布している蓋然性が高くなった。また、間接疑問文の歴史についても昨年度に引き続き調査し、発表を行った。その結果、カによる間接疑問文は、上方資料では19世紀まで「話者の不確定性」を表していたが、19世紀以降の江戸語資料では、「話者の不確定性」が薄れていくことが明らかになり、一般言語学で言われる変化の方向性を再検討しなければならないことが分かった。以上のような、疑問文、および疑問に関連する構文ついて本年度も、昨年度に引き続き、沖縄県宮古島市での調査を行った。特に、今年度の調査では、宮古島方言の疑問文が、現代標準日本語や、中古語とは異なる特徴を持っていることが分かり、それについても学会発表を行った。
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Research Products
(4 results)