2010 Fiscal Year Annual Research Report
イントネーションの音韻構造の解明に基づく『イントネーションの類型論』の構築
Project/Area Number |
21820026
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
五十嵐 陽介 広島大学, 文学研究科准, 教授 (00549008)
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Keywords | イントネーション / 類型論 / 日本語諸方言 / 韻律 / 音韻論 / 音声学 / prosody-syntax interface / intonational phonology |
Research Abstract |
1.中国語の声調の文中での変異 声調言語である中国語における声調の文中における変異に関する研究を共同研究者とともに行った。昨年度の研究で我々は、「第二声」「第三声」と呼ばれる声調の実現形が、従来知られていた形とは異なりうることを明らかにしたが、本年度の研究では、それらの声調に加えて「第一声」と呼ばれる声調も、特異な実現を示しうることを明らかにした。文中の声調変異に関する本研究は、声調言語のイントネーション研究に重要な示唆を与えるものである。 2.琉球語宮古池間方言の韻律構造 2種類の語彙的音調を区別する体系を有すると従来考えられてきた琉球語宮古池間方言が、3種類の語彙的音調を区別する体系であることを、共同研究者とともに初めて明らかにした。また、この3種類の音調の区別は、当該の語と述語を含む3つ以上の語の連続においてのみ、実現されることを明らかにした。この方言は、声調言語的特徴とストレス言語的特徴を兼ね備えた方言であることがすでに知られているが、今回の研究は語彙的音調およびイントネーションの類型論を構築する上で重要な示唆を与える。 3.日本語東京方言と近畿方言の韻律統語写像規則の対照研究 東京方言と近畿方言の韻律統語写像規則を比較する実験的研究を行った。先行研究では、両方言の間に特定の韻律統話写像規則に差があるとする見解と差はないとする見解が対立していたが、本研究の結果は、方言差は見られないとする見解を支持するものとなった。 4.世界の諸言語における韻律句形成の類型論の提案 研究代表者が従来提案していた日本語諸方言の韻律句形成の類型論を一部改定し、その適用範囲を世界の諸言語にまで広げた類型論を提案した。具体的には、英語、オランダ語、ブラジルポルトガル語、韓国語ソウル方言、バスク語、スペイン語、アラビア語エジプト方言などを、韻律句形成の観点から2種類の類型に分類した。
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