2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21820028
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
田中 智行 徳島大学, 大学院・ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (50531828)
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Keywords | 『金瓶梅』 / 小説手法 / 小説批評 / 張竹坡 / 研究史 |
Research Abstract |
平成二十二年度においては、『金瓶梅』にみられる小説手法についての評価史を中心に検討を行った。まず古典的『金瓶梅』論の代表として張竹披(一六七〇~九八)の『金瓶梅』批評に着目した。自らも「世情の書」の創作を試みて挫折した経験を語る張竹披は、作者の立場に視点をおき、『金瓶梅』を完全無謬のテキストとして扱って、一見単純な錯誤と思える箇所すらもすべて作者の意図の反映として理解しようとする。全体構成を透視することによってこそ作者に「騙され」ずに済むのであると述べる張竹披の読み方の然らしめるところ、作品を読み進める際に読者が抱く素朴な感興よりも、前後と脈絡づけて或る場面の位置づけや意味を論じることが優先されがちとなる。こうした張竹披の解釈姿勢は同じ箇所に対する崇禎本と張竹披の批評を読み比べることによっても浮き彫りにすることができる。一方で近代以降における『金瓶梅』の小説手法に関するの言説を整理し、(1)作中の社会描写を淫狸描写から切り離して前者のみを高く評価する態度の是非、(2)作中に描かれる世界から作者が批評的距離を取れていないとの批判を誘発する作品の特質を如何に評価すべきか、(3)作中の人物描写が前後で矛盾していて性格の発展が根拠づけられていないという批判の当否、(4)登場人物が歌で感情をあらわす箇所を小説表現としてどう捉えるべきか、(5)作中に多くの先行作品の引用が散りばめられている点をどのように評価するか、などの論点が如何に論じられてきたのかを振り返った。
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Research Products
(1 results)