2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21820031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
浅川 泰宏 Saitama Prefectural University, 保健医療福祉学部, 講師 (90513200)
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Keywords | 巡礼 / 宗教文化 / 民俗宗教 / ツーリズム / 四国遍路 |
Research Abstract |
本研究では、巡礼に関する空間や民俗・文化、とりわけ巡礼路の空間的再編と接待の現代的再構成を、「巡礼路再生運動」を事例に考察する。巡礼路再生運動とは、巡礼路や巡礼に関するさまざまな文化や民俗を文化資源として現代的なコンテクストのもとに「再生」し、地域の活性化や観光振興に活用する試みを総称するものとして筆者が定義した概念である。今日、熊野古道や四国の遍路道、サンティアゴ・デ・コンポステーラのカミーノなどのさまざまな巡礼でみられる現代的な現象であり、具体的な内容としては巡礼古道の特定作業や道標・休憩所の設置、徒歩巡礼等の体験学習の実施、巡礼に関わるボランティア組織の立ち上げなどがあげられる。本研究では四国遍路を中心に、既存の地域ボランティア組織を改編して巡礼者歓待習俗「接待」を行う組織をつくりあげた「牟岐町お接待の会」(徳島県)などの重要な事例を選定し、現地調査を踏まえた比較研究を通して、巡礼に関する宗教民俗や宗教的空間の現代的変容を考察することを目的する。2009年度は、牟岐町お接待の会の接待活動と香川県さぬき市の花折峠遍路道、高知県中土佐町のそえみみず遍路道などの現地調査を実施すると共に、巡礼路再生運動に関わるエージェントとして、国土交通省四国地方整備局や四国ツーリズム創造機構などを訪問し、インタビューや資料の入手を行った。その結果、明らかになったのは巡礼路再生運動の多様化・活性化という発展状況と、その担い手たちが抱える高齢化・過疎化という二面的な構造である。またそえみみず遍路道では地域開発とそれに伴う文化資源の喪失という問題が確認された。現地では高速道路の建設に伴って遍路古道の一部が山ごと消滅し、かわりに高架橋をくぐる石段の迂回路が建設さたが、こうした宗教的空間の変容がどのように意味化されるのかという重要な課題が浮き彫りになった。
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[Journal Article]2009
Author(s)
浅川泰宏
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Journal Title
経済からの脱出(第6章 祓いの威力・払いの魔力-現代日本の民俗宗教)(織田竜也・深田淳太郎共編)(春風社)
Pages: 139-165