2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21820031
|
Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
浅川 泰宏 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 講師 (90513200)
|
Keywords | 巡礼 / 宗教文化 / 民俗宗教 / ツーリズム / 四国遍路 |
Research Abstract |
本研究では、巡礼に関する空間や民俗・文化、とりわけ巡礼路の空間的再編と接待の現代的再構成を、「巡礼路再生運動」を事例に考察する。巡礼路再生運動とは、巡礼路や巡礼に関するさまざまな文化や民俗を文化資源として現代的なコンテクストのもとに「再生」し、地域の活性化や観光振興に活用する試みを総称するものとして筆者が定義した概念である。本研究では四国遍路を中心に、既存の地域ボランティア組織を改編して巡礼者歓待習俗「接待」を行う組織をつくりあげた「牟岐町お接待の会」(徳島県)などの重要な事例を選定し、現地調査を踏まえた比較研究を通して、巡礼に関する宗教民俗や宗教的空間の現代的変容を考察することを目的とした。 2010年度は、牟岐町お接待の会の接待活動と、松坂峠(同町)、松尾峠(高知県宿毛市~愛媛県南宇和郡愛南町一本松)、柏坂峠(愛南町内海~宇和島市津島町)などの再生された遍路古道の現地調査を行った。お接待の会については、秋(10月)と春(3月)に1週間の集中的な調査を行った。接待のビデオ撮影、メンバーからの聞き取り調査、調査者自身による接待の体験、さらにお接待の会の成立母体のひとつである配食ボランティアの参与観察などを行った。その結果、牟岐町の事例では春の祝祭的な接待の伝統を有する地区と町内の真言系寺院の詠歌組-すなわち民俗的・宗教的な活力を湛えた組織-の参加が、接待の再生に決定的な影響を与えたことが明らかになった。これをひとつのモデルとして構築した巡礼路再生運動における宗教民俗の現代的変容の見取り図を、2011年6月の日本文化人類学会第45回研究大会で「巡礼路再生運動における宗教民俗の組み替え」として発表する予定である。また春の調査では、東日本大震災発生直後の四国遍路の状況についてもデータを得たことを付記しておきたい。
|