2009 Fiscal Year Annual Research Report
大規模楽譜叢書編纂事業にみる、音楽芸術の価値基準の変化と西洋音楽史学の戦略
Project/Area Number |
21820033
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Okinawa Prefectural University of Arts |
Principal Investigator |
朝山 奈津子 Okinawa Prefectural University of Arts, 音楽学部, 助教 (30535505)
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Keywords | 音楽学 / 西洋史 |
Research Abstract |
本研究初年度は、約半年間において、対象とする資料の内容をデータベース化する作業に専念した。楽譜叢書各巻序文のなかで、研究の資料となる部分を抜き出した。なお、収集したデータの詳細な分析、および包括的な考察は次年度の作業とする。研究実施計画に照らしては、現状は2ヶ月程度の遅れと言わねばならないが、資料の整理は着実に進んでおり、次年度において充分に取り戻せる予定である。 現段階で報告できる具体的内容としては、次のことがある。戦前刊行分の『ドイツの音楽遺産Das Erbedeutscher Musik』(EDM)では、それ以前の『ドイツの音楽記念碑Denkmaeler deutscher Musik』(DDT)に比較して序文が簡潔化し、1巻の分量が減少する傾向が見られた。DDTの序文はしばしば詳細な譜例を用い、学術論文と同等の充実した内容を備えていたが、EDMでは数ページ程度のごく簡単なものとなっている。次年度の研究で、議事録等の編集に関わる記録を調べる際には、こうした方針の変化の理由についても明らかにしたいと考えている。 以上の作業は、本研究の基盤を成すと同時に、これまで手近にありながら歴史的な史料としてほとんど注目されてこなかった文書の整理、いわば新資料の発掘としての重要性を持っている。本研究は当初、史料研究として成果を出すことを目的に掲げていなかった。が、次年度の成果を報告する際に、これら収集資料の内容の分析結果だけでなく、その内容を具体的に紹介することで、本研究は史料研究としても意義を持つことになると、現在は考えている。
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