Research Abstract |
ジャンル・アプローチに基づく英語ライティング授業の効果を1年間に渡り縦断的に調査した.授業で扱うジャンルは,前期がEメール文,後期が要約文である.平成22年度実績報告書では主にEメール文の変化について報告したため,この平成23年度報告書では要約文の変化に焦点を当てる. 学期初めと学期末に学習者が産出した要約文を次の5項目に焦点を当て比較した.(1)流暢さ,(2)文の複雑さ,(3)パラフレイズ率,(4)文法的比喩(節の名詞化=情報の凝縮),(5)要約文総合的評価である.尚,言語能力と要約力の関係についてさらに詳細なデータを得るために,学習者を言語能力に基づいて2グループ(上級・初級)に分けた. 得られた結果を以下にまとめる.1.「流暢さ」は,両グループともに有意な伸びが見られた.2.「文の複雑さ」は,上級グループに関しては有意な伸びが見られたが,初級グループでは数値が下がる傾向が見られた.3。「パラフレイズ率」は,両グループともに伸びが見られたが,有意な伸びが見られたのは上級グループのみだった.4.「文法的比喩」は,上級グループに関しては有意な伸びが見られたが,初級グループでは数値が下がる傾向が見られた.5.「要約文総合的評価」は,両グループともに伸びが見られたが,有意な伸びが見られたのは上級グループのみだった.以上の結果から考察できることは次の通りである.1.ジャンル・アプローチは言語力の高い学習者層を指導する際に有効となる.2.文の複雑性やパラフレイズ率を高めるには高い言語能力が必要となる.3.文法的比喩は,学習者のリテラシー能力の発達と共に使用頻度が上がることが先行研究で報告されており(e. g, Schleppegrell, 2004),アカデミック・ライティングで最も重要な要素であると言われているが,同じことが要約文についても言える読んだり聞いたりした情報を自分の言葉で要約する力は学業のみならず社会に出た後も様々な場面で必要となるが,要約の仕方を明示的に学ぶ機会は決して多くはない.選択体系機能言語学に基づくジャンル・アプローチは,その力を育成する重要な指導法となる可能性が高い.
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