2010 Fiscal Year Annual Research Report
平安時代仮名作品および漢詩文作品にみる中国文学受容の様相
Project/Area Number |
21820046
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
長瀬 由美 明治大学, 研究・知財戦略機構, 客員研究員 (20553324)
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Keywords | 漢詩文 / 平安文学 / 源氏物語 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に引き続き白居易の散文作品、および『文選』の平安中期における受容を調査した。白居易散文の受容については、昨年度『白氏文集』中「策林」について、一条朝の明法家惟宗允亮の『政事要略』、藤原行成の『権記』、藤原実資『小右記』の受容の様相を検討したが、加えて行成『新撰年中行事』についても調査し、白居易散文「策林」の、一条朝の受容の様相の全体像を解明するべく調査を深めた。その他白居易散文受容の例として『白氏文集』翰林制詔に関してその受容を調査し、翰林制詔の擬制について、平安時代中期・菅原文時の意見封事にその方法が受容されていることを分析・考察した。この菅原文時は、『源氏物語』作者紫式部の父である藤原為時の学問の師であり、『源氏物語』に特有にみられる準拠という虚構の世界を創出する方法も、これら平安朝漢詩文における、白居易の虚構の方法の受容との関連を見出せることを考察した。これらの成果は本年度には発表し得なかったが、平成23年度前期中に論文にまとめて発表する予定である。 六朝文学受容については、平成21年度に引き続き『源氏物語』の『文選』受容の様相の分析を軸に進めた。前年度は須磨巻の光源氏の言葉に『文選』古詩十九首の第一首の引用があること、それは『文選』五臣注をふまえていることを分析したが、さらにややくだった場面に、古詩第五首を踏まえる表現も認められることを明らかにし、それら『文選』古詩をちりばめることによって、五臣注が記すところの、暗示的な政治批判の文脈を形成していることを考察した。さらにこうした五臣注に依る『文選』古詩受容・引用のありかたについて、同時代の男性貴族達の詩作にみられる引用態度との関連を調査した。
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