2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21820069
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
鈴木 桂子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 准教授 (10551137)
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Keywords | 芸術諸学 / 文化人類学 / 視覚文化 / 日本史 / 近世文化史 / 国際情報交換 / イギリス:アメリカ合衆国:カナダ / データベース |
Research Abstract |
1. 具体的内容 (1) 立命館大学『ARC浮世絵データベース構築システム』により、研究者限定ではあるが、世界有数の美術館所蔵の浮世絵およそ25万点の検索が可能となった。これにアクセスし、近世日本社会で広く共有された視覚文化としての浮世絵に、「他者」がどのように表象・視覚化されたかを検証した。22年度は、「他者性」のシンボルとして、外国人の視覚的特徴に加えて、彼らにより輸入された物質文化の日本文化における流通・提示・表象の仕方について調査・研究した。 (2) この研究により、様々な国からの輸入品が、長崎商人が独占する流通経路を経ることによりミックスされ、それによって物質的だけでなく視覚的な合成と錯覚が引き起こされることを証明した。言い換えれば、来日する中国人、オランダ人、その他の外国人の視覚的特徴がミックスされただけでなく、彼らの船・輸入品の特徴も合成・混合された。このように日本で二次的に創出された「他者性」のシンボルは、浮世絵だけでなく当時の見世物にも確認でき、江戸時代後期を通じて町人文化のディスコースにおいて広く流通したことが判明した。 (3) 結果として、江戸時代の「他者」の視覚的構築のメカニズム・カテゴリー化についての考察を更に深めることができた。また22年度は研究成果の発表を国際学会等で行い、西洋文化・中国文化研究者との交流により、来日するまでの外国人・外国文化についての研究との連携の可能性が出てきた。 2. 意義 イメージ・データベースを体系的・網羅的に利用することにより、浮世絵の生産・消費に関わった社会集団とその文化の研究に、即ち、視覚文化研究に対するデジタル・ヒューマニティーズ的アプローチの有効性を検証していく。膨大な情報の蓄積から得られる知見と、確固たるデータに裏打ちされた科学的論証は、従来型の美術史研究に多大な示唆を与えるものである。
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