2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21820073
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
奥村 佳代子 Kansai University, 外国語学部, 准教授 (10368194)
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Keywords | 唐話 / 中国語 / 唐通事 / 長崎 / 江戸時代 |
Research Abstract |
21年度は、『訳家必備』の読解作業とともに、本資料の成立年代について調査した。 従来、日本における中国語資料(唐話資料)の存在と、その日本の文芸に及ぼした影響については、中国語学以外の分野、すなわち国語学や日本文学の立場から言及されてきたが、中国語学の立場から取り上げられることは少なかった。その原因のひとつに、鎖国政策下の日本の中国語資料に対する、口語資料としての位置づけがなされてこなかったことが挙げられる。また、実際に中国に赴いたうえで中国語を記録した欧米人による資料と異なり、日本人によって長崎で編纂された資料には、当時の中国における実際の口語がどの程度反映されているのか、という疑義が常に示されてきた。こうした疑義を生み出した要因には、唐話資料の多くが写本であり、記述、編纂された時期や作者名が明らかでないことが挙げられる。口語資料として扱う場合に、資料の性質を知る上で重要な鍵となる年代や作者が不明であることは、唐話資料の言語研究に大きな障害であったといえるだろう。 研究代表者は、『訳家必備』の内容を歴史的事実と照らし合わせ、記述されている情報が1753、4年の事柄に集中していることを突き止めた。中国語会話テキストとしての一面を有していることを考慮すると、唐通事が中国人との接触を通じて、経験し知りえた新鮮な情報を、当時の中国語で記録したと考えられるため、『訳家必備』は18世紀中葉の中国語の口語を反映している可能性が極めて高いという結論に至った。 年代不明の唐話資料が多い中で、『訳家必備』のおおよその年代を明らかにすることは、『訳家必備』の言語資料としての価値が高まるだけでなく、他資料との比較にも有効となりうるため、本研究の基礎作りとしては欠かせない作業であるといえる。
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Research Products
(2 results)