2009 Fiscal Year Annual Research Report
国家と市場の役割の変容と市民社会:EUにおける競争と公益
Project/Area Number |
21830004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
青柳 由香 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 博士研究員 (60548155)
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Keywords | 国家 / 市場 / 競争法 / EU / 連帯 |
Research Abstract |
今年度は、資料収集を行いつつ、判例・立法の分析を通じて、具体的に国家の役割の縮減と市場メカニズムの導入の程度を明らかにすることを目標とした。とりわけ、経済活動としての性質が低く国家の役割が高いと考えられている分野(主に、ヘルスケア、年金基金等の社会福祉に関連する事業活動)に焦点をあてて、これらの分野についての競争法の適用に関する判例において、どのような場合に公益を理由として競争法違反について正当化が認められているかを精査した。また、これらの分野に関する先行研究に照らして、以上の判例の理解を意義付けを行った。中間的な結論として、上述のような国家の役割が重要だと考えられる分野においても競争法の厳格な適用がなされるようになっていることから、市場化が強くみられるようになっていると考察に至った。 海外調査では、平成21年9月にHeike Schweitzer教授(欧州大学院大学(EUI)ロバートシューマンセンター)を訪問し、上述の論点についての意見交換を行い、また欧州における理論研究の状況について示唆をいただいた。 また、本年度の研究成果を踏まえて、平成22年1月8-9日に開催されたThe European Union Studies Association Asia Pacific第5回研究大会において、"EU as a Social Market Model : Market Economy and Social Model"と題する学会報告を行った。これは、上述の本年度の研究から得られた考察を内容として報告を行ったもので、本研究の中間報告と位置付けられるものである。傍聴者からいただいた複数の質問の中には、今後の研究方針に対して間接的ではあるが示唆となるものもあった。また、高い関心を得たことから、本研究に現代的意義があることを再認識することができた。
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