Research Abstract |
本研究の目的は,旧ソ連中央アジアのウズベキスタンを対象とし,共同体に根付いた社会ネットワーク(互助関係,血縁関係,その他の社会関係)の構造を解明することを通して,開発政策に有効な含意を導くことである.より具体的には,現地の共同体において収集した家計調査データとネットワーク・データを相互補完的に利用し,ERGMs(Exponential Random Graph Models)等に基づいた統計学的モデル(statistical models)を構築することで,共同体の諸機能(情報伝達,インフォーマル金融,リスク・シェアリング等)とそのメカニズムを共同体の内部構造の観点から解明するとともに,共同体固有の構造に調和的な開発政策オプションを提示することを目指している.本研究の実施は,(1)データ収集と入力作業,(2)データの視覚化と記述統計学的分析,(3)推測統計学的分析と統計学的モデルの構築,(4)応用的含意の検討と比較研究の各段階に分かれる.21年度は,(1)から(4)に関わる作業を同時並行的に進めた.(1)については,8月にウズベキスタン・アンディジャン州のマハッラ(地縁共同体)において実施した500世帯の家計・ネットワーク調査の入力作業を進めてきた.データ数が膨大であるため,入力作業は未完了であるが,これらのデータを用いた本格的な分析は22年度に実施の予定である.(2),(3)に関しては,既収集のデータを活用することで,試験的な分析を試み,また,(4)に関しては研究会における議論等を通して共同体分析における比較の視座を検討した.(3)の分析について,より具体的には,アンディジャン州のマハッラの住民のうち,指導者層に対象を限定し,ネットワーク・データにERGMsを適用し,MCMC(Markov Chain Monte Carlo)のアルゴリズムに基づいた実証分析を行った.21年度は,これらの分析結果に関して研究会での報告を重ねるなどして,方法論的な課題や改善点に関して検討を深めることができた.
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