Research Abstract |
本研究の目的は,旧ソ連中央アジアのウズベキスタンを対象とし,共同体に根付いた社会ネットワーク(互助関係,血縁関係,その他の社会関係)の構造を解明することを通して,開発政策に有効な含意を導くことである.より具体的には,現地の共同体において収集した家計調査データとネットワーク・データを相互補完的に利用し,ERGMs(Exponential Random Graph Models)等に基づいた統計学的モデル(statistical models)を構築することで,共同体の諸機能(インフォーマル金融,リスク・シェアリング等)とそのメカニズムを共同体の内部構造の観点から解明するとともに,共同体固有の構造に調和的な開発政策オプションを提示することを目指している.本研究の実施は,(1)データ収集と入力作業,(2)データの視覚化と記述統計学的分析,(3)推測統計学的分析と統計学的モデルの構築,(4)応用的含意の検討と比較研究の各段階に分かれる.22年度は,(1)については,9月にウズベキスタン・アンディジャン州のマハッラを再訪し,560世帯に及ぶ昨年調査データの欠損を補完することで,データ収集を完遂することができた.帰国後は,これらアンディジャン州のマハッラの家計調査データ及びネットワーク・データの入力,クリーニング作業を数ヶ月かけて進め,ほぼ完了した.今回,家計間の血縁関係,私的な財貨の移転授受,往来関係,回転型貯蓄信用講への所属などの情報をネットワーク・マトリックスの形式で整備できたことによって,村民間のリスク・シェアリングやインフォーマル金融に関するより詳細なメカニズムを検討することが可能となった.これら新データを用いた分析結果は,今後発表してゆく.また,(4)に関して,既収集データのERGMsに基づいた分析を,地域比較研究の点から再検討し,論稿を発表,報告するなどして,応用的含意を検討した
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