2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21830019
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
真保 智行 山形大学, 人文学部, 准教授 (70533355)
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Keywords | 技術経営 / イノベーション / 特許制度 |
Research Abstract |
本研究では、1976年に日本で導入された物質特許制度に注目し、それが企業のR&D活動にどのような影響を及ぼしたのかを検証した。保護範囲の拡大と研究開発の促進の関係をより正確に把握するために、日本特許だけでなく、米国特許も利用した。分析対象は日本の大手化学企業とした。 日本特許に関しては、1973年以降は年間6000件前後の出願があり、横ばいとなっており、1980年代に入ってから急激に出願件数が増加している。よって、物質特許制度の導入によって、研究開発が促進されたとはいえないようである。ただし、保護範囲が拡大したにもかかわらず、出願件数が減少しなかったことは、研究開発が促進された結果とみることもできるかもしれない。 米国特許を見ると、1970年代前半からの件数の低下傾向が、物質特許制度が導入された1976年を機に増加傾向に変化している。米国特許は制度改革の影響を受けていない中で、特許件数が増加しているので、これは物質特許制度が日本企業の研究開発を促進したことを示している可能性がある。 ただし、化学企業の海外への事業展開が進められており、そのために米国特許が増加している可能性もある。また、農薬、染料といったファイン・ケミカルの分野では、用途発明が特許化される慣行があり、物質特許よりは効力は弱いが、製法特許しか認められなかった医薬品に比べると、その影響は小さかったとも指摘されている。よって、今後は日本企業の海外への事業展開、他の産業との比較や参入、小規模企業への影響にも考慮しながら、分析を行う必要がある。
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