Research Abstract |
本研究の目的は,近年臨床心理学の中で重要とされるForgiveness(ゆるし)注の観点から介入を行うために,アセスメントツールとして使用可能な,わが国における「日本版ゆるし状態測定尺度(State forgiveness Inventory for Japanese;以下SFI-J)」を作成することであった。H21年度では,SFI-Jの項目作成ならびに尺度構成(研究1)を行った。自由記述の質問紙調査を実施し,得られた結果から諸外国の尺度を参考にSFI-Jの尺度項目の作成を行い,作成された尺度項目を用いて調査を実施し尺度構成を行うことを目的とした。 自由記述による質問紙では,(1)ゆるしていない状態に関する項目,(2)ゆるしている状態に関する項目を,感情,印象・イメージ,行動の3側面について尋ねた。調査対象者は,大学生80名であった。領域ごとに大学生3名,大学院生1名によってKJ法(川喜多,1967)によって分類を行なった。その結果,ネガティブな表現,ポジティブな表現を含め,感情領域では237個,イメージ・印象領域では106個,行動領域では193個,その他146個に分類された。 自由記述から得られた項目は多数得られたため,自由記述の結果を基に,心理学を専門とする大学院生,一般成人5名を対象に面接調査を実施し項目内容の検討を行った。その際,ゆるしている状態を操作的に「不当な行為を行った相手に対するネガティブな反応(感情,認知,行動)が低減され,ニュートラル,ポジティブな反応が生じている状態」と定義した。項目の検討を行った結果,80項目からなるSFI-Jが作成された。 80項目からなるSFI-Jを大学生57名対象に実施した。調査協力者の数が十分ではないため,現在も調査を実施しており,調査回収後,確認的因子分析を実施,尺度構成を行う予定である。
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