Research Abstract |
本研究の目的は,犯罪被害者の刑事裁判への関与が量刑に及ぼす影響を実証的に検討しようとするものである.本年度は,その実証を進めるための準備を行った.実証のためのデータとしては,訴訟記録と,模擬裁判実験による調査の2つを念頭に置いて準備を進めた.訴訟記録による実証を行う準備として,類似の方法で行われた実証研究を調査し,そこで扱われている変数の種類,および操作的定義の在り方を調べた.また,模擬裁判実験を行う際に利用する模擬裁判の映像の作成を行った.これは,裁判の傍聴等により刑事裁判の状況を観察し,シナリオを作成した上で,演劇等を行っている学生およびセミプロの方の協力を得て作成したものである.以上により,翌年度に行う実証研究の準備を行った. さらに,本研究では,実証的知見をどのように解釈するか,そしてそこからどのような規範的な提言ができるかについても考察の対象としている.そのような検討を行うため,本年度は海外との比較を行う視点を獲得すべく,アメリカ合衆国カリフォルニア州とワシントンD.C.において,インタビュー調査,および裁判見学等を行った.当該調査を通して,アメリカにおける被害者の権利の在り方に加え,そのような権利に対する実務家の意識について,知見を深めることができた. 以上のような,実証研究および規範的議論のための準備を本年度は行い,翌年度にその研究を実施して行くことが今後の課題となるが,現時点での研究の進捗状況,および実施に向けた意見交換を行う目的で,香港大学で行われた国際学会での報告を行った.そこで得られた批判等を受けて,翌年度の研究の実施方針に微調整を加える予定である.
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