2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21830030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 晋 The University of Tokyo, 社会科学研究所, 助教 (30553101)
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Keywords | 社会的選択理論 / 分配の公平性 / 世代間公平性 / 持続可能性 / 時間整合性 |
Research Abstract |
世代間公平性と持続可能性の問題の基礎的研究を行った.まず,直接に世代間公平性問題に取り組む前に民主的な政治決定とは何かをという背景的課題を検討した.ここでは有限人口を仮定したうえで,社会における政治的意思決定をいかに民主的かつ合理的に行いうるのかを分析した.次に,世代間公平性の研究のための基礎として,民主的な政治決定の理論的枠組みにおいて,通常仮定される人口の有限性の仮定をはずし,無限人口を許すような状況を分析した.この拡張によって,将来生まれてくる可能性のある無限人口を考慮にいれたうえでの社会的決定問題の検討が可能となる.こういった政治決定の枠組みに公平性の基準を導入し,検討することが世代間公平性の重要課題となる.そこで,無限人口を抱えた社会において,公平性の観点から望ましい分配とはなどのようなものかを検討した.望ましい公平な分配方法の性質が特徴づけられたもとでは,このような配分をいかにして達成するのかが問題となる.こうした研究の基礎として,制度設計の経済理論のなかでもっとも重要な結果の一つであるギバードの定理の別証明を与えた.さらに,持続可能性の問題に取り組む準備段階として,政治的意思決定の時間整合性の問題を検討した.特に,以前のステップで拡張した無限人口の政治的決定の枠組みにおいて,公平かつ時間整合的な政治的決定の不可能性定理を与えた.こうした不可能性定理をいかにして乗り越えていくかを検討し,いくつかの社会的な厚生評価基準を提示した.
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