2009 Fiscal Year Annual Research Report
労働市場改革に向けた若年有期契約労働者の技能形成とキャリアラダーに関する実証研究
Project/Area Number |
21830038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
西野 史子 Hitotsubashi University, 大学院・社会学研究科, 講師 (40386652)
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Keywords | 若年労働者 / 有期契約雇用 / キャリアラダー / 技能形成 / 社会関係資本 |
Research Abstract |
本研究は、若年有期契約労働者の技能形成とキャリアテダーに関して、企業側と若年有期契約労働者側の双方のインセンティブ構造と行為を実証的に明らかにしようとするものである。近年、若年有期契約労働者はフルタイム(週40時間)で勤務する者が増加する一方で、技能形成の欠如や家族形成の遅れなども指摘されている。彼/彼女らを取り巻く環境について明らかにすることは、現代の雇用政策を考察する上で喫緊の課題である。 本研究は、若年有期契約労働者のうちフルタイム(週40時間)で働く層に焦点をしぼり、(1)どのような技能形成が行われているか、(2)どのような有期契約労働者が正社員へ移動しているのか、(3)正社員に移動しない(できない)場合にはどのような制度的インフラが必要かについて検討する。 初年度である平成21年度は、分析の枠組みとして重要となる社会関係資本の概念に関する文献サーベイを行い、当該テーマにおいて一定の有用性があることを確認した。また、有期契約労働者の雇用実態や人的資源管理に関する実証研究のサーベイを行ったところ、有期契約労働者が正社員への転換を希望する際の重要な要因として、正社員登用制度が制度として存在することが不可欠であることが明らかとなった。一見当然のことであるが、労働者の正社員転換への意識自体が、制度に規定されるということを示す、重要な証拠である。 さらに、試験的に聞き取り調査を行った飲食店企業A社の事例では、正社員の業務は店舗での業務ではなく複数の店舗を監督するマネジメントの業務に特化されており、店舗で経験を積んだベテランの有期契約労働者が正社員への転換を、結果として「希望しない」ということも観察された。転換制度そのものだけでなく、正社員の要件や業務内容が重要であることが再確認された。
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