2010 Fiscal Year Annual Research Report
感情のエイジングにみられる不快感情特異性(ポジティビティ効果)の多角的検証
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21830048
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 敦命 名古屋大学, 環境学研究科, 講師 (80547498)
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Keywords | 実験系心理学 / 感情 / エイジング |
Research Abstract |
平成22年度は感情のエイジングと認知のエイジングの関係について検討をおこなった。具体的には,顔表情からの感情認識の年齢差(感情のエイジング)が加齢に伴う認知処理速度や流動性能力の低下(認知のエイジング)によってどの程度説明できるかを統計的に分析した。その結果,喜び,驚き,恐怖,悲しみの表情認識の成績の加齢に伴う低下は認知のエイジングによって完全に説明できることがわかった。この結果は,感情のエイジングと認知のエイジングは独立した現象であるという従来の想定に再考を促すものである。ただし,怒りと嫌悪の表情認識における年齢差は認知のエイジングと関連していないことも明らかになり,感情の質の違いを考慮に入れた細やかな研究の必要性が示された。とくに,怒り認識の加齢に伴う低下が認知のエイジングとは独立しているという結果は,これをポジティビティ効果の「純粋な」指標として用いることができる可能性を示唆している。以上の成果はCognitive Aging Conference 2010および日本心理学会第74回大会にて発表をおこない,現在論文が査読中である。また,昨年度に考案した「借金ゲーム」を改良した「融資ゲーム」を用いた研究も並行して実施した。融資ゲームとは,融資したお金を利息付きで返されたり横領されたりといった経験を通じて,信頼できる人物とできない人物の区別を学習する心理課題である。この課題を利用した実験によって,「外見(顔)は信頼できそうに見えるが実際は信頼できない人物が記憶されやすい」という昨年度の研究結果を追試することができた。融資ゲームは借金ゲームを単純化したものであり,心理実験に馴染みのない高齢者も遂行しやすいと考えられるので,今後のエイジング研究に大いに活用できると期待される。
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