2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21830051
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
チョルパン アスリ 京都大学, 経営管理研究部, 准教授 (70511286)
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Keywords | ビジネスゲループ / 開発途上市場 / 企業戦略 / 企業統治 / フィナンシャル業績 |
Research Abstract |
本研究は、特に開発途上経済におけるいわゆる「ビジネス・グループ」の動態を理論的、実証的に考察することをプロジェクト全体の焦点とした。最終年度に当たる2010年度においては、それまでの実証面での成果を踏まえて、理論的含意を含めたまとめを行った。 前年度までに判明した成果は、既存の特に経済学に基盤をおく議論が必ずしも近年のビジネス・グループが達成してきた経営、経済成果を説明するには不十分であるということであった。すなわち、経済学的な理解によると、ビジネス・グループは市場機構が不完全にしか機能していない開発途上の不完全市場においては一定の有効性を発揮できるが、経済発展に従ってその貢献を減じて、やがてはむしろマイナスの役割を果たすことになるというものであった。 しかし、本研究が実証的に明らかにしてきたことは、この理解が必ずしも現実のビジネス・グループの動態とは合致しないということであった。すなわち、特に近年国際的なビジネス分野において顕著に競争力を高めているサムソンあるいはタタといった企業は、ビジネス・グループのカテゴリーに分類される。つまり、非関連分野に多角化しているビジネス・グループが、関連分野に多角化している成熟経済に基盤を置く既存の大企業に比べて国際競争力に欠けると結論付けるのは、経験的な科学であるはずの経済学にとっては理論を重視する近年の姿勢がもたらす、むしろ弊害に近いものとして考えておいた方が良いと理解した。 さらに、ビジネス・グループは必ずしも開発途上経済に固有のものではなく、例えばアメリカにおけるバークシャー・ハザウェイに見られるように、成熟経済においても注目されるべき経済、経営成果を生み出していることが観察された。 つまり、ビジネス・グループの国際的な地位の向上を理解するには、やはり外的な市場経済環境にだけ着目するのではなく、ビジネス・グループに固有の内的な競争資源を解明することが必要であるという結論が導き出された。本研究の成果を踏まえて、この競争資源を具体的に実証的に考察していくことが今後の課題であると理解される。
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Research Products
(10 results)