2009 Fiscal Year Annual Research Report
空間認知における「参照枠」の効果:比較認知発達の視点から
Project/Area Number |
21830053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊村 知子 Kyoto University, 霊長類研究所, 特定助教 (00552423)
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Keywords | オプイィック・フロー / 空間認知 / 比較認知発達 / チンパンジー |
Research Abstract |
現実の3次元空間内では人間を含む霊長類から昆虫までの様々な動物が身体運動の移動情報を利用して現在位置を認識し目的地へたどり着く。一方、人間の場合はテレビや映画のような2次元の映像のように実際に身体運動の移動を伴わなくても視覚情報から3次元空間を認識することができる。しかし、人間やそれ以外の動物で身体運動に関連する視覚情報が2次元映像から3次元の空間を認識する際にどのように寄与しているかは明らかでない。そこで本年度は、コンピュータ画面上の仮想の3次元空間における経路学習課題をおこない、自己の身体運動に対応する視覚情報(オプティック・フロー)の効果について成人を対象に検討した。課題は、コンピュータ画面上に再現された3次元T字迷路においてスタートからゴールまでの経路を学習することである。被験者が画面上に提示されるキーに反応すると、迷路内を直進、左折、右折するオプティック・フローの映像が提示される条件と、移動前後の2フレームの映像が提示される条件を設けた。左右のキーを正確な順序で選択し、迷路内をスタートから目的地まで移動できるまでに要する試行数を分析した。その結果、先行研究とは異なり、オプティック・フローの条件に比べ、2フレームの条件で課題遂行に要する試行数が有意に減少した。したがって、ヒトでは3次元T字迷路の経路学習においてオプティック・フローが必ずしも有効な手がかりとして用いられていない可能性が示唆された。また、本課題では被験者が経路の系列を言語化して保持している可能性が示唆された。今後はチンパンジーを対象にオプティック・フローの効果に関する比較実験をおこなうとともに、空間認知における言語の役割を考察することにより人間の空間認知の特性の理解を目指す。
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Research Products
(7 results)