2010 Fiscal Year Annual Research Report
空間認知における「参照枠」の効果:比較認知発達の視点から
Project/Area Number |
21830053
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊村 知子 京都大学, 霊長類研究所, 特定助教 (00552423)
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Keywords | スリット視 / 時空間統合 / チンパンジー / 比較認知発達 |
Research Abstract |
本年度は、3次元空間における物体認識の中でも特に、動いている物体の認識について、チンパンジーとヒトの成体を対象に検討した。人間の場合には.動いている物体をスリットの隙間から見る場合のように、対象の大部分が遮蔽されて見えない場合でも、断片的な視覚情報を時間的・空間的に統合することによって物体や事象を認識している。一方、これまでの研究から、ヒトとそれ以外の霊長類では、個々の要素を全体的な空間的まとまりとして知覚する能力(知覚体制化)に関して差異が認められてきた。そこで、本研究では時空間的な統合能力についても同様の種差が認められるかについて検討するため、スリットの隙間から見える動く物体の認識について、ヒトとチンパンジーで比較した。スリットの後ろで線画が水平方向に動く動画を見本刺激とした継時見本合わせをおこない、スリットの幅及び呈示速度を操作した。その結果、ヒトは全てのスリット幅・速度条件で高い正答率を示したのに対し、チンパンジーはスリット幅の最も狭い条件、低速度条件よりも高速度条件で成績が著しく低下した。したがって、形態的情報の時間的統合過程にもヒトとチンパンジーで種差が見られることが示唆された。以上の結果から、ヒトでは特に他の霊長類と比べ、要素を空間的、時間的なまとまりとして知覚する、知覚体制化のはたらきが顕著に認められる可能性が示唆された。
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Research Products
(3 results)