2010 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの量と質:南アフリカにおける医療政策の変化と家計の教育投資
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21830058
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 高弘 大阪大学, 子どもの量と質:南アフリカにおける医政策の変化と家計の教育投資 (20547054)
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Keywords | 教育投資 / 出生行動 / 医療政策 / 貧困削減 / 南アフリカ |
Research Abstract |
本研究の目的は、南アフリカで1994年に始まった医療政策の変化(診療所の新規建設及び妊婦診療の無料化等)を用い、出生数と教育投資という子どもの量と質との間のトレードオフの関係を実証的に明らかにすることにある。政策の効果の判別に中長期的な時間を必要とする出生行動・教育投資などの家計行動に着目しているために、当初は1993年に調査されたKwaZulu-Natal Income Dynamics Study (KIDS)と2008年に調査されたNational Income Dynamics Study (MDS)とのデータの統合を試みた。これは政策の前後の変化を調べるのに不可欠の作業である。しかしながら、実際にはNIDS2008において、地域区分が変更されていることが確認され、データ統合のためには地図上にて重なり合う地域を特定する作業が必要となった。KIDS1993の調査で用いた区画の地図情報が入手できない上、地域名から類推した緯度経度を用いての特定作業は難航を極め、残念ながらこの作業は諦めざるを得なかった。政策評価の研究上、二つの調査データの統合は非常に有意義であると思われ、調査に関わった研究機関へ働きかけながら、今後も統合作業を継続予定である。一方、上述の分析の代替案として、分析上の工夫を加味しつつ、2004年に調査されたKIDSデータを用いた分析も行った。政策の影響を相対的に多く受けた地域とあまり受けなかった地域との比較から、政策をより受けた地域ほど、家計における子どもの数が有意に少なく、かつ教育水準が高いという結果が得られた。この結果は、政策を多く受けた地域ほど、子どもの死亡率が減少し、その結果出生数が減少していることを示唆しており、量と質のトレードオフという理論的予測を支持するものである。現在、分析結果をまとめている段階であり、早急に研究論文として完成させる予定である。
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