2009 Fiscal Year Annual Research Report
アートプロジェクトの事例にみる芸術労働の社会学的研究
Project/Area Number |
21830060
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉澤 弥生 Osaka University, 人間科学研究科, 特任研究員 (20513162)
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Keywords | 芸術 / 労働 / アートプロジェクト / 文化政策 / 社会運動 |
Research Abstract |
本研究は、アートプロジェクトの現場に関わる若手労働者を対象に、国内・海外での聞き取り調査をおこなうものである。 まず国内調査について、平成21年9月~22年3月にかけ断続的に、大阪市をはじめ各地で開催されているアートプロジェクトに関わる人々に聞き取りをおこなった。それぞれ、プロジェクトスタッフ、ボランティアスタッフ、公的施設職員、NPO職員、フリーランスなど立場や所属はさまざまだが、多くの場合厳しい雇用条件と社会状況のもと、多様な役割をこなしていることが明らかになった。これまでに15人のデータを収集しているが、今後はアーティストやキュレーターといったプロジェクトの企画自体に関わる人々への聞き取りも含め、今年度と同様のペースで実施していく予定である。 次に海外調査だが、平成22年2月~3月にかけて3週間実施した。まず現在文化政策の転換期を迎えつつあるロンドンに赴き、非営利の芸術創造の現場で活動する人々への聞き取りをおこなった。さらに、芸術家の労働運動について調査すべく、パリの労働組合の拠点を訪問した。この二都市はそれぞれ「政策」と「運動」という観点から日本の芸術労働の現状を考察する際に有効な視点を提供するとともに、それぞれの労働者の生活の仕方や社会制度の相違は、各々の社会における芸術文化の公共性の相違をも示唆している。考察を深めるため、次年度も継続調査を予定している。 今年度収集したデータは、現在の日本における、文化政策のもとで構造的に不可視化されている芸術創造の現場の不安定労働という問題を照射する第一歩となるはずである。そして、人間の根源的活動として芸術と労働を同じ地平でとらえ、芸術の公共性を新たな角度で照射しつつ、より実態に即した文化政策のあり方を提示するという目標に向け、今後も調査と考察を進めていく。
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Research Products
(4 results)