Research Abstract |
これまでに,様々な文化的背景を持っている在日外国人の日本適応に一律な支援を提供し,そして支援の効果が不明瞭であることを踏まえ,外国人の日本文化適応の研究に新たな方法を検討する。本研究では,最近日本社会に増え続けている中国人に焦点を当て,適応する側に視点を置くラボラトリー・メソッドによる「体験学習」を導入し,在日中国人の日本適応を支援する。この目的を実現するために,まず,平成21年度には,中国人が日本文化に適応するのに,中国人の他文化出身者と共通的な,そして特有なニーズを明確にする。平成22年度には,明らかとなった中国人のニーズをベースに,プログラムを組み,トレーニングの実施し,その効果を検証する。 平成21年度には,中国人の日本文化適応,とりわけ「同僚やクラスメートとの対人関係の形成」に特有の問題点を整理するために,自由記述調査を展開した。具体的に,中国人留学生・就学生151名を対象に,年齢・性別・来日の経過年数などの基本属性を尋ねた上,「同僚やクラスメートとのつきあいでは,日本人と中国人の違いは何であるか?」,「日本人とのつきあいでは,困っていることは何であるか?」,「日本人の間でのつきあいはどのような特徴があるか?」,「日本人とうまくつきあうために,何をすればいいか?」という5つの質問を設定した。併せて,中国人社会的スキル尺度と日本人社会的スキル尺度も同時に尋ねた。得られた文字データについて,KJ法に基づき,整理分類した。中国人学生が日本文化への適応には,日本式の集団主義のルール(例えば,和の維持に用いられる建前と本音の使い分け)に慣れないところが数多くあった。これらのことにより,中国人学生の日本適応に関する独特の部分は明確になり,次年度の適応訓練プログラムの作成に素材を提供することができた。
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