Research Abstract |
前年度までの先行研究で得られた15カテゴリーを項目化した調査票を作り,H22年度S大学新入生を対象にしたアンケート調査を行った。分析の結果,受験経験(受験勉強や受験対策)を通して得られた成長感として,「忍耐力」,「集中力」,「感謝の心」,「思考力」,「勉強の習慣」,「自信」,「計画性」,「自制心」,「特になし」,「情報収集力」,「対人関係」,「積極性」,「人間性」,「協調性」,「表現力」が気持ちの強い順に挙げられた。また,これらの順位について,性別,志望強度別,入試方法別,学部系統別にみることで特徴的な傾向が確認された。さらに,こうした成長感に対する認識が具体的にどのような高校生活の場面を通して得られたのかを検討するために,彼らを指導する立場にある高校教員を対象としたヒアリング調査を実施した(有効回答:46高校)。具体的には,これまでの調査結果をまとめた資料を提示しながら分析概要を説明し,上記で示したカテゴリーが高校生活のどういった場面を通して醸成されているのかについて意見を求めた。特に,「感謝の心」「対人関係」「協調性」といった情動的側面を持つカテゴリーについて詳しく尋ねた。その結果,「個別指導を要する受験対策が持つ影響力」や「合格実績を左右するクラスの雰囲気」など,大学入試がもたら遡及効果の側面を考察する視点が得られ,「入学者受入れの方針」を議論する上で配慮すべき高校での進路指導現場の実情を明らかにすることが出来た。
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