2009 Fiscal Year Annual Research Report
土壌及び大気に係る環境損害に対する責任制度の研究―海洋に係る環境損害との比較から
Project/Area Number |
21830084
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小林 寛 Nagasaki University, 環境科学部, 准教授 (30533286)
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Keywords | 民事法学 / 環境損害 / 海洋汚染 / 大気汚染 / 土壌汚染 |
Research Abstract |
平成21年度は、海洋に係る環境損害に対する責任制度を中心に、特に船舶起因の油による海洋汚染が生じた場合の環境損害の賠償・補償制度の研究を行った。これまでタンカー油濁損害と一般船舶油濁損害に分けて環境損害の賠償・補償制度の検討が行われて来なかったところ、本研究においては、これを2つに分けて検討を行った。かかる検討の結果、タンカー油濁損害にも一般船舶油濁損害にも環境損害が含まれていることが明らかとなった。次に、船舶油濁損害に環境損害が含まれているとして、それがどの範囲まで賠償・補償の対象となるのか、一定範囲で対象となるとしてそれが油濁事故に起因して発生する他の債権に船主責任制限制度との関係からどのような影響を及ぼすのかについて考察を行った。かかる考察の結果、環境損害概念やこれに対する責任制度を導入する場合でも油濁被害者の保護という船舶油濁損害賠償保障法の趣旨(同法1条参照)が後退しないよう一定の均衡を保つ必要があるという問題意識を近時の環境損害をめぐる議論に付加する必要があることが明らかとなった。 本研究における考察をまとめた論稿を上下巻に分けて平成22年中に発表する予定である。上巻については既に長崎大学紀要(名称:長崎大学総合環境研究)提出済みであり現在査読中(修正のうえ掲載可との査読意見)であり、近日中に掲載される予定である。下巻についても平成22年5月を目途に同紀要に提出予定である。 平成21年度中に行った海洋に係る環境損害の責任制度に関する考察を踏まえて、平成22年度においては大気汚染及び土壌汚染に係る環境損害の責任制度に関しても考察を進める計画である。
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