2009 Fiscal Year Annual Research Report
限界集落における住民の生活実態と集落機能低下の補完についての研究
Project/Area Number |
21830087
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
庄司 知恵子 Iwate Prefectural University, 社会福祉学部, 講師 (30549986)
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Keywords | 社会学 / 限界集落 / 集落機能 |
Research Abstract |
平成21年度は、限界集落論について、小田切徳美氏、大野晃氏の議論をもとに確認した。その上で、本研究の調査対象地である岩手県下閉伊郡岩泉町において、町生活保健福祉課長、町保健師、有芸地区支所長、栃の木・皆の川自治会長、有芸地区新規参入者に聞き取り調査を行った。調査からは、(1)有芸地区は、9行政区で構成されており、それぞれが準限界集落状況にある、(2)集落単位での生活協同が困難な地区が存在し、集落間の連携により生活協同を行っている、(3)全ての生活協同が集落間の連携により行われているわけではなく、その内容は、限定されたものである、(4)集落間の生活協同の連携に際しては、山間地域特有の地理的環境が影響し、有芸地区を3区分(3~4集落)し、行われている、(5)集落機能の補完においては、有芸地区の小学校も重要な資源となり、伝統芸能の継承については、学校行事を通して行われている、(6)最初は、一集落によって行われていた収穫祭のイベントを集落間の協同で維持することにより、岩泉町以外からの参加者を招き、地域内の活性化を図っている、(7)新規参入者の存在と彼らが地域に与えるインパクト、以上7点が確認された。 これまで、限界集落を巡る研究では、集落機能の限界が指摘され、大野晃氏が提案する「流域共同管理論」等、上流・下流との関係性から、限界集落の問題を捉えなおす作業が行われてきた。しかし、住民の日常生活の維持に焦点をおいて調査すると、より身近な社会関係の重要性が指摘できる。その関係性は、集落内、そして近接集落へとつながっている。有芸地区の中でも、地理的環境により集落間協同の範囲が近接集落に限定されていることを考えるならば、協同可能な集落機能の内容を明らかにし、近接集落との協同のありようから、限界集落における集落機能の補完について描き出すことが求められる。
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