2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21830114
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
山口 裕之 東洋大学, 経営学部, 講師 (50509255)
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Keywords | 経営学 / 技術経営 / 経営戦略論 / 技術変化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、技術変化に対して企業が及ぼす影響を解明することにある。技術変化は、企業の競争構造に変化をもたらすことで、従来の事業活動の有効性を破壊しうるという点で、企業にとって対応すべき現象である。その一方で、技術変化は、企業を含む様々な行為者間での相互作用によって影響を受ける社会的現象である。しかし、技術変化への対応という問題を扱った議論では、技術変化に対して企業が及ぼす影響が十分に検討されていないように思われる。この間隙を埋めるべく研究を進めてきた。 本研究を通じて得られた知見は、技術変化の規定因である新旧各技術の性能水準と顧客の性能選好に対して、企業はその事業活動を通じて影響を及ぼしうる、ということである。製品市場において選択される技術は、顧客にとってより高い効用を提供する技術である。この効用は、技術が実現する複数の性能と、複数の性能に対する顧客の選好により規定される。前者に対しては、研究開発活動を通じて、後者に対しては、製品の市場投入やマーケティング活動を通じて、企業は影響を及ぼしうる。 こうした知見からは、技術変化への対応に関して従来の議論とは異なる示唆が導かれる。従来の議論では、企業にとって外生的に与えられる技術変化への対応策として、事業活動の焦点を新規技術へといかに迅速に移行させるかが議論されてきた。しかし、上記の知見に基づけば、技術変化は、技術変化を想定した企業の対応行動によって自己実現的に発生するものと考えられる。仮に、技術変化を想定した対応行動とは異なる事業活動が産業内において展開されれば、想定された技術変化は回避・抑制されうる。この場合、従来の議論で示唆されてきた対応行動は、企業に破壊的な結果をもたらしてしまうこととなる。技術変化への対応を策定する際には、自社を含む企業の行動が技術変化に及ぼす影響を検討することが重要となるのである。
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Research Products
(1 results)