2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本における西洋近代法受容の知的基盤-前近代東アジア圏の法言語分析を手掛かりに-
Project/Area Number |
21830155
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
和仁 かや 神戸学院大学, 法学部, 講師 (90511808)
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Keywords | 法制史 / 琉球 / 近世史 / 近代史 / 比較文化 |
Research Abstract |
今年度はまず、昨年度予想以上に進展が見られた琉球に関する研究に、引き続き取り組んだ。近世琉球で起草された成文法典『琉球科律』について従来の研究では、中国律の影響をダイレクトに受けた上で、琉球固有の法が反映されたことが概括的に指摘されるに留まっていた。本研究ではこの法典を内在的に読み直し、さらに中国律のみならず幕府法や近代初期に律を継受して起草された刑事法的諸法典との比較対照を行うことによって、『琉球科律』が形式的には中国律に則っていながら法典としては凡そ異なる性質を有することを明らかにし、この見解を論文にまとめ公表した。かかる『琉球科律』の性格は、前近代の法継受現象の多様性を改めて浮き彫りにしたものであり、対外的な関係からの影響を主たる考慮要因とする従来の手法の限界を図らずも示し、ひいては本研究の特色として位置づけた、法を記述する言語を史料内在的に分析することの重要性を再認識する契機ともなった。この理解に基づき年度後半は、宮崎道三郎による比較言語研究を分析する作業に本格的に着手した。宮崎の著作は、東アジア諸国言語を網羅した該博な言語学及び歴史学の知識に基づいて著されており、その検討には様々な道具立てが必要となる。その一端として、差し当たり宮崎の著作と共に、岡松文書の中に残された彼のローマ法を始めとする比較法制史に関する講義録を手掛かりとして、彼の法言語をめぐる思考について考察を進めた。その結果、宮崎が依拠した言語分析の手法が、近世から近代にかけての法制度の、少なくとも形式上の激変期において、東アジア圏における法をめぐる概念の視座を提供する上で如何に鞏固な手法たり得たか、幾つかの具体的な知見を選るに至った。同時に岡松文書中の台湾関係文書をも調査することで、以上の考察の相対化にも努めた。現在この成果についての論文を執筆中である。
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Research Products
(1 results)