2009 Fiscal Year Annual Research Report
14世紀リヨンの毛織物業者の会計研究―フランス最古の会計帳簿の分析―
Project/Area Number |
21830159
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
|
Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
三光寺 由実子 Matsuyama University, 経営学部, 講師 (60549301)
|
Keywords | 会計学 / 会計史 |
Research Abstract |
本研究は,フランスの商人が記した最古の会計帳簿であるリヨンの毛織物業者の会計帳簿の断片(1320-1324)を研究対象として,簿記書が出版される以前にどのような簿記・会計の知識が持たれていたのかを考察するものである。研究実施の初年度である平成21年度には,以下のような3ステップを段階的に行った。 まず,第1ステップとなったのが一次史料の解読であった。この際に,フランスの中世フランス研究史家の間で定評のあるGodefroy[1961]を研究費より購入し,記述内容の確認を行った。 第2ステップでは,第1ステップを踏まえた上で,会計帳簿の記録からリヨンの毛織物業者の経営活動のプロセスと取引相手との関係性を立体的に可視化することを試みた。この段階で,今後の考察において着目すべき点を見出すことができた。すなわちMeyer et Guigue[1906]の底本たる同会計帳簿の別の断片では不明であった記録者の名前がJohanym Berguenであると判明し,さらには債務者Bernerz Barauzと,記録者Johanym Berguenとが提携関係にあることが分かった。 第3ステップより,会計帳簿の分析に入った。そして簿記・会計の観点で興味深い発見として,いくつかの記録については,当該史料で見られる通常の記帳順序,つまり左欄上から下へと記載し,欄内の記録が埋まった後右欄上より記録を行うという順序ではなく,左欄から隣の右欄へとしたためた点があった。これは,考証の縁となり得るものと考え,22年度も検証を深める予定である。 これらの研究成果については,日本会計研究学会第59回関西部会にてその一部を取り扱った他,松山大学論集第21巻第6号(2010年3月発行)において,「14世紀リヨンの毛織物業者の会計帳簿に関する追窮-1964年発見分の史料観察-」309-433頁として公表した。
|