2009 Fiscal Year Annual Research Report
水俣病多発漁村における漁業の盛衰と被害の社会的広がりの重畳作用に関する研究
Project/Area Number |
21830163
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
井上 ゆかり Kumamoto Gakuen University, 水俣学研究センター, 研究助手 (10548564)
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Keywords | 水俣病 / 環境 / 漁業 / 公害 / 被害者 |
Research Abstract |
2009年度は次の三点をおこなった。第一に、水俣学現地研究センター(水俣市浜町)を研究拠点にして葦北町大字女島沖集落44世帯への聞き取りを開始。第二に、水俣病事件史と女島沖集落の漁業史、漁民の語りを重ね合わせた年表を作成開始。第三に、女島において戦後から昭和29年頃まで盛んだった巾着網漁の体験、水俣病事件が発生し、家族を単位とした漁業形態に変化していく中で花形とされた五智網(トントコ漁)の体験、漁協関係組織と水産試験場などの資料調査を開始。これらの基礎的作業をとおして、不知火海沿岸住民の生業たる漁業の発展と衰退の過程が水俣病事件とどの様な連関を持つのかを明らかにした。 2010年度は、1974年に結成された水俣病認定申請患者協議会の初代会長をつとめた岩本廣喜氏が自ら沖集落の家々を訪ねて各家々の来歴について詳しく聞き取りまとめた『歩み』(私家版、1971年頃と推定)、『女島家系図』(私家版、1971年頃と推定)の資料と、聞き取りをもとに女島集落の家族樹形図を地図の上に落とし込む作業を行っている。この作業をとおして、各世帯の家族構成や婚姻関係、地域内の親族構造の濃密さ、種々の救済策の受給状況、水俣病認定状況を明らかにする。女島集落の持つ共同体としての特徴、巾着網時代に形成された網元と網子の関係である「統体制」の内実を知る有力な情報となる。またこの家族樹形図をもとにして漁業組織としての「統体制」を具体的に概念化していく。 本研究の最終着地点は、水俣病多発漁村の一つである女島集落において漁業形態や変遷、村落構造の特徴、水俣病被害の社会的側面の特徴を捉えることで、公害事件の特徴、社会構造の問題点を明らかにすることである。
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Research Products
(4 results)