2010 Fiscal Year Annual Research Report
記憶の意図的抑止機能と抑止方略に関する生涯発達心理学的研究
Project/Area Number |
21830170
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Research Institution | Aichi Gakusen University |
Principal Investigator |
堀田 千絵 愛知学泉大学, 家政学部, 講師 (00548117)
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Keywords | 教育系心理学 / 生涯発達 / 意図的抑止方略 / 認知機能 / QOL / ライフスタイル / 忘却 / 未来志向 |
Research Abstract |
交付申請書に記載した「研究の目的」:自己にとって不要な忘れたい過去の記憶を忘却し、現在の出来事を前向きにとらえていく精神機能の発達的変化について、記憶の意図的抑止機能とその方略という観点から中高年者を対象に検討を行うことであった。その検討課題は大きく2つに分けられる。第1に、中高年者それぞれが抱く辛い記憶の忘却の経過を主観的経過時間とQOLとの関係から横断的に明らかにすることであった。第2に、第1の結果をふまえ、健康な高齢者が利用する忘却のための方略の解明とその使用頻度を日々のライフスタイルとの関係から明らかにすることであった。「研究実施計画」:実施方法は、中高年者を対象とした8月の町民ドックに照準を合わせ、調査項目、検査内容の事前の準備と町民ドック実施後のデータ分析、および評価と成果報告としての学会発表、論文執筆を計画的に進めた。「具体的内容」:研究実施の結果、以下の2点が得られた。(1)加齢に伴って不快記憶を抑止する頻度が低下すること、および方略の使用の低下は促進されない。(2)加齢の効果とは独立に、ライフスタイルが充実している高齢者は、充実していない者よりも不快記憶を抑止しようとする意図的抑止努力の頻度も高く、抑止のための方略の使用パターンも多様化していた。「意義、重要性」:これらの結果から、加齢に伴う自然進行的な認知機能の低下に伴い、不快記憶を完全に抑止できないわけではなく、友人と旅行に出かける、定期的に運動をする、娯楽を楽しむなどの眼前の生活が充実し、過去にとらわれない生き方を身につけている場合、不快記憶を抑止し積極的に現在の生活に目を向けることができる点という極めて重要な知見が得られた。これらの結果は、中高年者が健やかに生きるための処方箋を提示しており、その内容は、(1)過去にとらわれない生き方をする、(2)それを支える機能は、日々のライフスタイルの質や量であった。これらの結果は、以下2点において有意義であるといえる。(1)意図的抑止機能の生涯発達的変化の基礎研究としての資料を、40代から80代の横断研究によって明らかにした点である。(2)意図的抑止機能の低下防止に関わる生活機能と忘却能力の直接的な関係を解明し、中高年者への予防と対応に関する今後の研究の具体的方向性を前方視的に明らかにした点である。
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