2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21830174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
橋本 照男 The Institute of Physical and Chemical Research, 象徴概念発達研究チーム, 研究員 (40553756)
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Keywords | 展望的記憶 / 閾下刺激 / fMRI / 意図の保持 |
Research Abstract |
本年度の研究目的は、閾下刺激を用いて、他の課題に従事中に、顕在的に想起させることなく、保持された意図と一致する刺激と一致しない刺激とに対する神経活動を比較することで、保持された記憶の処理基盤を明らかにすることであった。背景課題中に意図と一致した潜在刺激を呈示すると、後の展望記憶成績を促進した。同様に、実行すべき行為を潜在的に呈示すると、展望記憶成績を促進することはなかったが、行為を実行する際の反応時間が短くなった。これらの結果は、意識できないほど短時間でも、保持された意図と一致する刺激にさらされると、その意図を想起しやすくなることを示している。また、行為そのものにさらされても、意図を想起しやすくなる効果はないが、運動反応を促進することができることを意味する。 背景課題中に意図と一致した潜在刺激が呈示されると、前頭前野の前部の活動が高まりが確認された。この部位はヒトで特異的に発達している部位であり、複合的な課題の遂行、将来の行為や意図の保持との関わりが示唆されている。展望記憶課題の実行時には前部帯状皮質の尾部の賦活があった。また展望記憶成績の促進は補足運動野と、行為潜時の短縮は運動前野とそれぞれ関わりがあった。これらの脳活動は、注意や警戒感の促進、自発的行為と刺激誘発性行為との関連が考えられる。以上の結果は、潜在的に意図を保持している状態を初めて捉えただけでなく、警戒を保っことで、実行すべき意図を想起しやすくなる可能性を示唆している。
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