2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21830174
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
橋本 照男 独立行政法人理化学研究所, 象徴概念発達研究チーム, 研究員 (40553756)
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Keywords | 展望的記憶 / 閾下刺激 / fMRI / 意図の保持 |
Research Abstract |
前年度の研究計画は、閾下刺激を用いて、他の課題に従事中に、顕在的に想起させることなく,保持された意図と一致する刺激と一致しない刺激とに対する神経活動を比較することで、保持された記憶の処理基盤を明らかにすることであった。本年度の研究目的は、さらに、その意図を保持することの効果を検討し、後に実行すべき意図を伴った記憶、つまり展望的記憶と意図を伴わない通常の想起との違いを明らかにすることであった。 前年度は、後に実行すべき意図と合致した閾下刺激が展望的記憶の想起を促進させることを明らかにし、さらにfMRIを用いてその神経基盤を解明することができた。展望的記憶は複合的な高次認知課題であり、本研究は記憶だけではなく、注意や切り替え、さらに行為の実行という一連の日常的認知処理を捉えることができたと言える。また、展望的記憶は頭部外傷患者や重度はもちろん軽度の認知症患者においても障害されるが、本研究成果は一般的な"し忘れ"の改善法につながることが期待できる。本年度は、脳画像研究の専門誌においてその研究成果を発表することができた。1年半という限られた期間ではあったが、当該論文は初めて責任著者として発表したものであり、論文の発表に関するほぼ全てを個人で行うことができた。しかし、そのために前年度のデータの拡充と再解析、論文の推敲を重ねたために、当初の計画であった意図の保持の効果を検討する研究には着手できなかった。
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