2010 Fiscal Year Annual Research Report
カイラル超伝導体の単一ドメインにおける新奇量子輸送現象の探索
Project/Area Number |
21840004
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
延兼 啓純 北海道大学, 大学院・理学研究院, 助教 (60550663)
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Keywords | カイラル超伝導 / マヨラナフェルミオン / トポロジカル量子現象 / 単一ドメイン / 量子異常 |
Research Abstract |
本研究の目的は、単一ドメインサイズのSr_2RuO_4試料を用いて、カイラルp波超伝導体におけるトポロジカルな新奇量子現象を電子輸送測定により探索することである。昨年度までの研究成果として、単一ドメインサイズの試料においてパリティの破れた電流-電圧特性を明らかにした。いったいパリティの破れた電流-電圧特性の起源は何であろうか?本年度は、その起源をより詳細に明らかにするために、単一ドメインサイズSr_2RuO_4の試料端へ金電極を取り付け、電子輸送測定を行った。試料端にはカイラル超伝導体のトポロジカルな性質が顕著に現れるため、未解決な電流-電圧特性の起源に迫れる可能性がある。まず、これまでに測定した試料と同様にパリティの破れた電流-電圧特性が観測された。さらに新しい結果として、c軸に平行に0 Oeから1200 Oeへ磁場を印加したとき、450Oe付近を境として印加電流の向きにかかわらず、正電圧の発生(すなわちV(+I)=V(-I))から、負電圧の発生(-V(+I)=-V(-I))へ、系統的に変化することを初めて発見した。この結果は、Sr_2RuO_4試料がカイラルな単一ドメインであり、ゼロ磁場で自発磁化していること、また外部磁場を印加することによってドメインのカイラリティが変化していることを示している。これはSr2RuO4がカイラル超伝導体である有力な実験結果である。また、我々はパリティの破れた電流-電圧特性の起源として、単一ドメインの試料端におけるマヨラナフェルミオンの励起を提案した。実験結果、及び議論は、Physical Review B 83,144502(2011)に掲載された。本研究によるSr_2RuO_4超伝導体中のマヨラナフェルミオンの発見により、今後は物性実験の立場から素粒子物理とのトポロジーに関する普遍数理構造の追求に興味が持たれる。
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Research Products
(4 results)