2010 Fiscal Year Annual Research Report
水素結合型プロトン伝導体の相転移とプロトン伝導メカニズムの解明
Project/Area Number |
21840007
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鬼柳 亮嗣 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (50521770)
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Keywords | 物性実験 / 誘電体物性 / 粒子線 / X線 |
Research Abstract |
本研究の目的は構造的観点からプロトン伝導体中のプロトン伝導メカニズムを明らかにすることである.昨年度の研究により,Rb_3H(SeO_4)_2の良質な大型単結晶育成に成功しており,本年度はこの単結晶を用いた中性子単結晶構造解析を行い,伝導プロトンの直接観察を行った.実験は,日本原子力研究開発機構原科研内の研究用原子炉(JRR-3)に設置してある中性子4軸回折計を用い,超プロトン伝導相転移温度の上下で行った.また,実験に際しては伝導度の同時測定を行い,マクロ物性の変化を確認しながら構造データの収集を行った. 相転移に向かう構造の変化を詳細に調べた結果,2つのSeO_4四面体を繋ぐ水素結合の距離が温度の上昇にともない増加することがわかった.超プロトン伝導相においてはSeO_4四面体の1つの頂点酸素が3つの等価な位置を同時に占有する無秩序な状態にあることがわかった.このときSeO_4四面体は非常に歪んだ構造をしており,相転移が自由エネルギー中のエントロピーの項の要請によるものであることを示唆している.原子核密度分布解析を行った結果,構造全体に広がる連続的な密度分布が相転移温度以上で確認された.この密度は負の散乱振幅によることがわかり,プロトンの伝導経路を可視化したものであることがわかった.この経路は3回軸を囲む3つの水素原子位置を結ぶようにネットワークを構築しており,主要なプロトン伝導経路は2次元的であることがわかる.この結果は伝導度の方向依存性の測定結果と一致する.また,隣り合う水素原子位置の間には,小さな密度の山が確認され,プロトンが隣り合う2つの位置を移動する際に,中間位置を経由して移動していることが示唆された.
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Research Products
(4 results)