2009 Fiscal Year Annual Research Report
隕石の海洋衝突により生成する生物有機分子の総合的解明
Project/Area Number |
21840013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古川 善博 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 助教 (00544107)
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Keywords | 生命の起源 / 隕石衝突 / アミノ酸 / 揮発性有機化合物 / 初期地球 / 衝突実験 |
Research Abstract |
生命誕生前の地球において生命を形成する有機分子(生物有機分子)がいつどのようにして誕生したのかに未だ明らかになっていない。この生物有機分子の起源に関してはこれまで、主に宇宙飛来説、海底熱水説、隕石海洋衝突説が提案されている。宇宙飛来説、海底熱水説はNASAを中心に欧米で盛んに研究が行われてきた。一方、隕石衝突生成説はこれまであまり注目されていなかったが、Furukawa et al.2009の模擬実験によりアミノ酸やカルボン酸の生成が示され、その重要性が明らかにされた。しかし、隕石の衝突現象には、速度、飛翔体の組成など、その変化が衝突化学反応に大きな影響を及ぼす事項が多く存在する。また、無機炭素からの有機物生成であるため、これまで明らかになっている生成物の他にも多種の有機分子の生成が期待される。本年度は、主に隕石衝突を模擬した衝突回収実験において生成する多種有機分子の総合的分析手法の確立と実験における衝突速度向上およびコンタミネーション防止のための試料セルの改良を行った。生成有機分子の総合的分析には揮発性有機分子(VOC)の分析が不可欠である。そのため、専用のVOC collecterを製作し、実験後の試料容器からVOCを回収率良く取り出し、GC/MSにより分析することに成功した。これにより、炭化水素、アルコール、アルデヒド、ニトリルなど、多種類のVOCの生成が確認されつつある。また、試料容器の材質変更と設計の改良により、試料への炭素のコンタミネーションを低減することに成功した。 以上の成果のように、隕石の海洋衝突を模擬した衝突実験において生成する有機分子の総合的分析が進んでおり、これにより隕石の海洋衝突が生命の起源に大きな影響を与えたことがより明確になりつつある。また、隕石衝突によるVOCの生成が初期地球の大気組成に影響を与えたことも新たに明らかになりつつある。
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