2010 Fiscal Year Annual Research Report
放物型誘導表現を中心とした実半単純リー群の表現論の研究
Project/Area Number |
21840016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 紀行 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特任助教 (00553629)
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Keywords | 半単純Lie群 / 放物型誘導表現 / Jacquet加群 |
Research Abstract |
放物型誘導表現のJacquet加群はねじれた一般Verma加群による拡大を持つ.一方,変形されたVerma加群の拡大により得られる加群は,Fiebigによるmoment graphの理論を用いて記述することができる.昨年度,変形されていない加群を記述する枠組みを確立できる可能性に気づき,引き続きそのような理論の確立を目指した研究を行った.昨年度,Verma加群の場合に考えるべき拡大の候補を挙げたが,今年度はそれらが正しいものであるといういくつかの証拠を得ることができた.しかし,まとまった結果を得ることはできず,論文としては発表していない.また目標としていた変形を必要としないmoment graphの理論も完成まではしばらく時間が必要であり,今後の課題として残った. 一方本年度はJacquet加群の幾何学的な実現に関する研究を,九州大学の三枝氏と共同で行った.Beilinson-Bernstein対応及びRiemann-Hilbert対応により,適当な意味で実半単純Lie群の表現の圏は,旗多様体上の同変偏屈層のなす圏と圏同値になる,これにより,Jacquet関手を偏屈層に対する操作としてとらえることができるが,この関手の純粋に幾何学的な構成がEmerton-Nadler-Vilonenにより行われていた.一方,同変性により実半単純Lie群の表現の圏は対称空間上のBorel部分群同変な偏屈層のなす圏とも圏同値になる.この場合対称空間は旗多様体と違いコンパクトではないめ,コンパクト化を持つ.本年度はこの対称空間及びそのコンパクト化を用いることにより,やはりJacquet関手を幾何学的に実現することができることを示した.もともとJacquet加群には,表現の漸近挙動を調べるという目的があったと思われるが,コンパクト化を用いた構成はある意味で極限をとった構成であると思うこともでき,そのような形でも意味があると思われる.この結果については,現在論文を準備中である.
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