2010 Fiscal Year Annual Research Report
断層のDcを決めるものは何か?~高速度カメラを用いた粉体剪断層可視化による解明~
Project/Area Number |
21840022
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桑野 修 東京大学, 地震研究所, 特任研究員 (30511969)
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Keywords | 粉体 / 摩擦 / 断層 / 地震 / 室内実験 |
Research Abstract |
本研究では高速度カメラを用いた粉体剪断層の可視化により、粉体の弱化距離すなわちDcを支配する具体的な物理メカニズムの解明を目指す。これまで地球に対してリアリスティックな物質を用いての実験が行なわれていたがDcを支配する物理が何十年も明らかになっていなかった。そこで、物質依存ではなく粉体であることに起因した、Dcを支配する普遍的なメカニズムの解明に焦点を当て、あえて単純な球状粒子(具体的にはガラスビーズなど)を用いて実験を行う。本年度は昨年度から引き続き粉体の定常状態の摩擦係数について研究を行い、地球科学分野で知られている岩石の摩擦法則と粉体の摩擦法則のつながりを明らかにした。粉体の摩擦法則に関しては、固体地球科学と統計物理の分野で各々ある限定された速度条件で成り立つとされる法則が知られていた。固体地球科学では速度状態依存摩擦法則が知られており一般的に速度弱化である。統計物理では別の経験則が知られており、速度強化を示す。しかし、それらがどうつながるのか(つながらないのか)は、これまで分かっていなかった。今回我々は、両者を含むような実験条件で統一的に実験を行った結果、両者がある特徴的すべり速度で切り替わることを発見した。これは支配的な散逸メカニズムが粒子間摩擦から粒子の非弾性衝突へ切り替わることに対応する。さらに、この特徴的な速度を定量的に見積るための式を導出した。後者の速度強化に関しては粉体の数値シミュレーションで発見された摩擦法則によく一致する。これらの成果はAmerican Geophysical Union, Fall Meetingで発表し、論文にまとめて投稿中した。この他に、本年度は定常状態だけでなく過渡的状態での摩擦の振舞を調べるために、装置の垂直荷重を一定に保つ機構と小型ロードセルを開発した。
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